第十回 CSR 
【発表者】 細井・石川・露口・牧野

◇要旨◇
今回の発表では、企業がCSRを行う理由を、CSRが必要とされる社会的背景、さらに踏み込んでCSRが企業の競争優位の源泉になりうるものであるということの実証を明らかにすることで示した。その後、歴史的経緯から現代の日米欧のCSRのそれぞれの位置づけを考察し、それを踏まえて日本のCSRをステークホルダー、リレーションシップの重要性から論じた。

 ―競争優位としてのCSR―
消費者・従業員・投資家の観点からCSRが競争優位の源泉になりえることを示す。消費者の観点からは、意識の変化やLOHAS市場の拡大によって、従業員の観点からは人権やモチベーションの向上というファクターから論じた。投資家の観点からはSRIやCSRと株価の関係性を見ることによって、実証していった。

 ―日米欧のCSRの歴史背景と現代における位置づけ―
1920年代に宗教的観点からアメリカで始まったCSRはその後、公民権運動や反戦運動を経て民間のNGO団体の管轄するものとなり、現代では地域社会に根付いたフィランソロピー中心になっている。ヨーロッパのCSRの歴史は浅く、EU統合以降に行われた国際協議をうけて各国で法制化の動きが見られる。地球温暖化などの環境に配慮したものや、人材育成などのCSRが中心である。日本のCSRは公害に対する対策として行われており、また最近の企業不祥事への対応として、環境対策やコンプライアンスという段階で終止している。

 ―ステークフォルダー・リレーションシップ―
企業のCSRを具体的に見ていく。CSRを通じた新規顧客の獲得の具体例として、フィリップスと積水ハウス、アサヒビールの取り組みを挙げている。それぞれの取り組みがステークホルダーを通した企業価値の向上に寄与しているかどうかを考察した。


  発表資料 ―― 発表スライド(CSRの定義・競争優位としてのCSR・日米欧のCSRの歴史背景と現代における位置づけ
                     ・ステークフォルダー・リレーションシップ)
  補足資料 ―― CSRの定義(予習) バウンダリー問題

◇ディスカッション◇
「ソニーのCSRについて環境分野以外のものの対策を考えよ。その際、実際に実行する際の障壁なども考慮せよ。」

  復習資料 ――


◇教授より◇
CSRについて多角的な視点から説明が行われました。LOHASに代表される消費者の意識の変化や、SRIに代表される投資家の投資行動の変化は興味深い現象です。また、CSR実施について最大の権限を持っている経営者が、CSRを競争優位の源泉としてとらえ始めていることも報告されました。しかしながら、池澤君がまとめた資料「CSR--バウンダリー問題」の最後の方に記されているように、CSRの意義を感じていない経営者も多くいることも事実です。この限界をどのようにして乗り越えるか、その方法が、アメリカとヨーロッパとでは違っています。アメリカでは経営者の経営権を尊重し、違法行為が無いかぎり政府は企業経営に介入しません。ヨーロッパでは、環境や雇用・賃金などについてEUがガイドラインを作成し、各国政府はその法制化や政策化を行い、企業経営を方向づけます。日本は、この二つの流れの間で揺れ動いているように見えます。






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