第11回 SCM
今日の報告の中では、とりわけ岡野君の「日本のグローバルSCM」という報告がおもしろかったです。今期の大学院のゼミでは、R・ウィットレイ『ビジネス・システムと組織的能力』という英語の本をテキストにして、日本、米国、ヨーロッパを母国とする多国籍企業の経営組織や経営戦略などを勉強しています。この本の第3部は「トランスナショナルな組織的能力の構築」というタイトルとなっていて、日、米、欧の企業が経営のグローバル化のなかで、どのようにして組織的能力を作り出しているのかが分析されています。
岡野君の報告ではヨーロッパ企業は「マルチナショナル型」、日本企業は「グローバル型」、米国企業は「インターナショナル型」と名付けられていましたが、ウィットレイの分類では、ヨーロッパ企業は「包括的協力型」、日本企業は「ビジネス的協力型」、米国企業は「アームレングス型(一定の距離を置いた関係)」ということになります。
日系の多国籍企業の特徴としては、海外子会社への権限委譲は限定的で、一部の管理者に限られるという特徴があります。それ以外の子会社の従業員については、長期的なコミットメントを求めないし、そのためのキャリア・コースも用意しません。したがって、本社と子会社との知識の共有化には限界が生じます。その分、日本本社からの指揮が重要な役割を果たすということになります。
グローバル化に関する分析のポイントは、国によって企業の内部構造も違うし、外部の制度環境も異なるという事実です。したがって、ほとんどの場合、母国と同型の組織を他の国で複製するはできないということです。そういう制約の下で、多国籍企業はトランスナショナルな組織的能力を構築しなければならないのです。




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