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第11回 ナレッジ・マネジメント

 ナレッジ・マネジメントについては、去年もテーマとして採り上げましたが、今日の報告の特徴は、暗黙知それ自体の重要性に焦点が絞られていた点です。この点は、野中郁次郎さんのナレッジ・マネジメント論がもつすぐれた独自性でもあります。従来の経営学や実際の経営は、現場の労働者(とくに熟練労働者やベテラン)の保有している暗黙知を、形式知に変換して、それをマニュアルやデータベースに蓄積して、社員全体で共有するとともに、管理者のコントロールのもとに置くことを目指すことが多かったと思います。つまり、暗黙知から形式知へという方向が重視されました。
 しかし、このような方向の試みは、ある程度までは可能で有効ですが、限界があります。また、やりすぎるとベテランの誇りを奪い、技能向上意欲の低下を引き起し、技能低下や技能非継承をもたらします。とくに日本企業の競争力は、長期雇用を通じて蓄積された暗黙知にかなり依存していますので、その弊害は大きいです。
 今日話したように、行き過ぎたマニュアル化(形式知化)によって、技能が低下する(暗黙知の創造が阻害される)という現象を、わたしは国鉄で働いていたときに実際に経験しました。
 野中さんのSECI理論は日本企業の失敗と成功の経験をふまえて構築された理論だと思います。それは、暗黙知から形式知へという一方向の理論ではなく、形式知から暗黙知へという方向をも併せ持つ両方向の理論です。今日の報告は、この点を明らかにしたことが、よかったと思います。
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