| 第六回 ＩＴ・インフラ 【発表者】 近藤・石川・長浜・牧野 ◇要旨◇ 生産性や効率性の向上、競争優位の獲得、他企業との差別化が実現され得る、という事実を背景に日本企業の間で急速にITの導入（IT化）が推し進められている。そこで、今回はこのIT化が日本企業に及ぼす影響について考察してみた。なお、考察に際して企業を「ヒト」と「組織」に分解し、さらにヒトを「雇用」「教育」「評価・配置」という企業内でのヒトの流れに細分化した上で「雇用」と「教育」に焦点を当てた。「組織」に関しては、「階層構造」と「権限」に絞った考察を行っている。 ―組織構造への影響― IT化により企業の組織構造にもたらされた変化は大きく分けて「組織のフラット化・エンパワーメント・意思決定権限の集中化」の三つである。 ・組織のフラット化 管理階層（特に中間管理職）が削減され意思決定のスピードアップや伝達される情報の正確性が高まると考えられる。 ・エンパワーメント 顧客ニーズの高度化や多様化に対応するためにITが導入されており、そのようなニーズに迅速に対応することが企業に求められている。この実現のためには組織（ヒエラルキー構造であることが多い）を遡っていては非効率的であるがために、現場の人間への意思決定の権限移譲がなされており、現場での改善や革新が素早く実行されうると考えられる。. ・意思決定権限の集中化 企業内で共通の認識を持って個別の情報を他の有効な情報と結びつけて判断することが重要となる（KMなど）ことからトップマネジメントの意思を下位まで浸透させることが必要となり権限の集中化が行われる。 ―雇用への影響― IT化が雇用に与える影響としては、�ゞ般海良現牴宗�細分化、��定型的業務のウェイトの低下、�５瓩瓩蕕譴襯好�ルの変化、�� 雇用形態の変化、の四点が存在する。特に影響が大きいのが�，任△蝓△海譴砲茲衒�雑で困難であった業務が誰にでもこなすことの出来る業務へと変化し、パートタイマーや契約社員などの非正規雇用の割合が増加するといった点が考えられる。つまり、従来の日本的雇用が崩壊し、雇用形態が多様化するのである。 ―教育の変化― ITはただそれだけで成果の上がるような代物ではなく、それを使いこなす側のヒトの教育が重要な要素のひとつとなり、教育の変化も必要となってきている。教育の対象としては、意思決定を行う経営層と導入されたITを実際に現場で使用するユーザー部門の二者が重要であると考えられる。教育分野に関しては、ITそのものやその導入により得られる成果に対する理解を促す意識的な側面と、実際に使いこなすスキルを身につけさせる実務面とが想定される。さらに、IT化に伴う教育をより効果的なものとするために、各部門間の積極的な人材交流を伴った全社的な人材育成や、ビジネス全体のマネジメント力の強化も図られるようになってきている。 発表資料 ―― 発表スライド（ＩＴ、ＩＴ化による影響―組織構造、雇用、教育） 補足資料 ―― ＩＴの定義（予習） ＩＴ化による企業組織浩造の変化 IT化進展に伴う社内教育〜eラーニング〜 松下の中村改革 ◇ディスカッション◇ 「日本企業はIT化の影響を受けて組織構造をピラミッド型から文鎮型へ移行することが求められているが実際には上手くいっていない。その理由と対策を考えよ。」 移行がうまく進まない理由として、日本人の地位を重視する気質や社員が経営に参加することが根付いていないといった日本企業の風土が考えられる。また、文鎮型の場合はトップに立つ人間が膨大な部下を抱える必要があるのであるが、それ相応の指導力を備えた人物が育っていないことも理由のひとつである。（詳細は配布試料参照） 解決策であるが、まず前提として組織構造をピラミッドから文鎮へと完全に変えることは現実的ではなく困難を極める。そこで、２班は「ピラミッド型のフレームワークを保ちつつ、文鎮型に適した分野を担っているセクションのみを文鎮型へと移行させる」を提案する。つまり、情報の鮮度・速度がものを言う分野で文鎮型を導入するのである。 復習資料 ―― 組織の形態比較 ◇教授より◇ 今回の報告ではＩＴ化が、労働者のスキルおよびスキル形成プロセスにどのような影響を与えるか、また企業の組織構造がどのように変化するかが報告されました。現時点で明らかになっている事柄がたいへんよくまとめられていて、今後の変化の大まかな方向が提示されたと思います。たぶん最終的には、報告されたような方向に、スキルも組織構造も変化すると思います。しかし、それは直線的で自動的なプロセスではなく、複雑で不確定なプロセスであるという点に留意する必要があります。なぜなら、実際の歴史的変化には、技術的要因以外の様々な要因も関係し、それらについてはまだまだ不確定要素が多いからです。たとえば、ピラミッド型組織構造が成立する際にも約半世紀の試行錯誤の時間を要しています。部品の標準化、細分化し単純化した作業の連続的配置などにもとづく大量生産技術は１９世紀末から２０世紀初めに確立しますが、現代の大企業に典型的にみられるピラミッド型組織構造が確立したのは２０世紀半ばです。その間、垂直的統合、賃金制度や人事制度の近代化、事業部制の導入など、様々な分野で、多くの人の努力によって制度革新が積み重ねられました。ITという技術革新が、ピラミッド型組織構造にとってかわる新たな組織構造に結実するためには、多くの制度革新が必要となるでしょう。たぶんみなさんが就職して働いている期間がこの制度革新の時期に当たるでしょう。よりよい企業組織に導いてほしいものです。
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